モデナを訪ねて
現在ではすっかり日本でもお馴染みのバルサミコ。そのルーツを辿ると、実に奥深い調味料であることが見えてきます。
今夜はそんなバルサミコの伝統を紡いできた地、イタリア・モデナ地区にフォーカスしてバルサミコの秘密に迫ります。
北イタリア・モデナの地が紡いだ伝統
北イタリアのエミリアロマーナ州は食の宝庫。生ハム、パスタ、チーズの他、中でもモデナ地区では中世から続く伝統的なバルサミコが名産です。モデナの地でバルサミコづくりが発展したのは、そのユニークな気候から。夏は蒸し暑く、冬はうんと寒い。モデナの寒暖差の激しい気候や地形、土壌は原料のブドウ品種(トレッビアーノ、ランブルスコ)の栽培だけでなく、バルサミコの発酵にも最適な環境だったのです。
北イタリアにあるエミリア・ロマーナ州モデナ
色づいてきたブドウ畑
コラム「香り高きバルサミコの秘密」の回でも少しご紹介させていただきましたが、いわゆる「伝統的なバルサミコ」と名乗ることが許されているのは、イタリア・モデナ地区またはレッジョ・エミリア地区で伝統的な製法でつくられた、DOP(原産地保護呼称制度)認証を得たバルサミコのみ。 その伝統的なバルサミコは、ブドウ果汁を煮詰め、樫、桜、桑、栗、アカシア、ビャクシンなどの様々な樹種の木樽への移し替えを繰り返しながら、自然発酵させてつくられています。
そのため、要する熟成期間は最低でも12年。長い歳月をかけてゆっくりと熟成しながら、異なる木樽の香りを果汁にまとっていきます。
木樽でゆっくりと熟成させる
深い味わいと複雑な香りはこうして生みだされているのです。12年以上熟成させたものをトラヴェッキオ(伝統的)アッフィナート、25年以上熟成させたものをエクストラヴェッキオ(とても古い)として記載が許可されています。本物のバルサミコとしての区別を徹底することで、モデナの歴史的伝統を守る努力が続いており、そこには人々の伝統に対する誇りと愛情が凝縮されているのです。
モデナ・マルピーギ社の伝統製法によるバルサミコづくり
貴族の間での高級品、治療薬としての歴史
そんなバルサミコも、現在では広く世界中で使用されている調味料ですが、かつては貴族や皇族の間で愛用されていた貴重品でした。当時は一滴の価値がどの食品よりも高価と言われていたほど。当初は調味料としてというよりは、疲労回復や消化剤としての薬に、また、中世後期にはヨーロッパ全土で流行したペストの治療薬として用いられていました。
かつては薬として利用されていたバルサミコ酢
メゾンブレモンド1830と年代物バルサミコの楽しみ方
最後に、メゾンブレモンド1830おすすめのモデナ産熟成バルサミコ3種をご紹介。
■「イチジクプレミアム バルサミコビネガー100ml」5年熟成
ぶどうのまろやかな甘みとやわらかな酸味に、イチジクの豊かな風味が加わった濃厚なのにフルーティーさも感じられるバルサミコビネガー。ベースとなるバルサミコはイタリア・モデナで1850年から代々受け継いだマルピーギ家伝承のレシピを使用。5年間オーク樽でゆっくりと熟成させ、深いコクとまろやかな酸味が特徴。また、濃縮したイチジクが30%以上含まれおり、イチジクの芳醇で甘い風味があらゆる料理を引き立ててくれます。
イチジクやメロンなどのフルーツに合わせたり、白カビチーズやヨーグルト等におすすめ。
まろやかな甘酸っぱさと濃厚な味わいがベストマッチの一品です。
■「15年熟成IGP モデナ産バルサミコビネガー250ml」15年熟成
15年もの間樽の中で熟成されることで、ブドウの甘みが凝縮され、角のない上質な酸味へと変化しました。「ブドウの蜜」と例えられる程、とろりと濃厚な甘みとまろやかな酸味のバランスが絶妙です。そんな最高品質のバルサミコは、チーズやアイスクリーム、フルーツなどに数滴垂らすと、熟成ブドウの芳醇な香りとほのかな木樽の複雑な香りが広がります。その香りと口の中で広がる深い味わいは格別そのもの。
■「30年熟成 モデナ産バルサミコビネガー 100ml」30年熟成
30年熟成にもなると、こっくりとした黒糖のような甘さととろみに。
あたたかいお料理(火を通したお肉屋やお魚がベスト)をいただく直前に数滴垂らすと、フワっと芳醇な香りがより一層広がり、極上の一品に仕上がります。
熟成された芳醇で濃厚な味わいは、穴子やカジキマグロ、ハモなどの魚料理や、ローストビーフ、ラムレーズンアイスやカカオ濃度の高いチョコレートと相性抜群です。
手塩にかけてつくられたバルサミコは年月を経るほど価値が出るとされ、年代物はコレクターズアイテムのよう。イタリアでは大切な記念日のギフトに贈る方も。もちろん、お好みに合わせて熟成期間の異なるバルサミコの使い分けを楽しむのも一つのアイデアです。
皆さんもぜひ、本物のイタリア・モデナの伝統を堪能してみてくださいね。バルサミコを通じて、イタリアの伝統的な食文化と素敵な物語を発見できますように。
Bon dégustation!